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書く敏感期とは(3歳半~4歳半)

「うちの子、まだ字なんて書けないのに、お絵描きをするといつも真ん中に何かを書き込んでいる」「急に手紙を書きたがるようになった」…3歳・4歳のお子さんをお持ちの親御さんは、そんな行動に心当たりがあるかもしれません。
これは、モンテッソーリ教育でいう「書く敏感期」が始まっているサインです。文字や書くことへの強烈な衝動が訪れるこの時期を正しくサポートすることで、お子さんの学びへの意欲は格段に高まります。
この記事では、モンテッソーリ教育における「書く敏感期」の時期とメカニズム、そしてご家庭で親御さんが簡単にできる具体的なサポート方法を解説します。
モンテッソーリ教育における「書く敏感期」とは?
モンテッソーリ教育では、文字の習得は「書く」と「読む」に分けられ、驚くべきことに、「読む」よりも「書く」の方が早く始まります。
- 書く敏感期:3歳半~4歳半ごろ
- 読む敏感期:4歳半~5歳半ごろ
この時期、子どもたちは文字の形をなしていなくても、丸や線を使って何かを紙に書き残そうとする衝動を強く持ちます。これは、文字というよりも、まるでオリジナリティあふれる「暗号」のようですが、これこそが敏感期のサインです。
3歳児クラスでどこの幼稚園や保育園でも「お手紙ブーム」が起こるのは、まさにこの書く敏感期にあたるため、必然的な現象と言えるでしょう。この「書きたい」という強烈な運動の衝動を活かして、丁寧に文字を整えるサポートをしてあげることが重要です。
なぜ3歳半で「書きたい」衝動が始まるのか?敏感期のメカニズム
「書く敏感期」が「読む敏感期」よりも早く訪れるのには、乳幼児期から続く「運動の敏感期」(6か月~4歳半ごろ)が深く関係しています。
書くという行為は、実はとても高度な「運動」です。紙の上に何かを描くためには、肩や肘、手首、そして指先の細かな筋肉を協調させて動かす必要があります。特に、鉛筆を握るために必要な「親指・人差し指・中指」の三本の指の動きをコントロールしたいという欲求が、この時期にピークを迎えます。
書く前段階で「小さいものへの敏感期」がカギとなる
この三本の指の繊細な動きは、書く敏感期より少し前に見られる「小さいものへの敏感期」(1歳半〜4歳ごろ)で養われます。指先で小さなゴミをつまんだり、ビーズや砂粒のような極小の物体に熱中したりする行動は、まさに鉛筆を正しく持つための準備運動なのです。
焦って文字の練習をさせるのではなく、この時期に「つまむ」「運ぶ」「挟む」といった指先の動きを伴う遊びをたくさん取り入れることが、書くための基礎体力づくりになります。
「書く敏感期」を最大限に活かす!親が整えるべき2つのポイント
「書く敏感期」は、子どもの「書きたい」という意欲が最高潮に達している時期です。この衝動を無駄にせず、文字を書くために必要な「秩序」を混乱させないよう、親は以下の2点に特に注意してサポートしましょう。
1. 正しい「持ち方」の獲得をサポートする
一度間違った持ち方を覚えてしまうと、後から直すのは非常に困難です。また、間違った持ち方では、長時間書いても疲れない、美しい字を書くための土台ができません。
モンテッソーリ教育では、正しい持ち方で指の力をコントロールできるようになるために、「砂文字板」や「金属はめ込み」といった教具を使います。ご家庭では、市販の鉛筆補助具を利用したり、「三角鉛筆」のような、自然と正しい持ち方に誘導される文具を使うことも有効です。
2. 「書き順(運筆)」の秩序を教える
この時期は、同時に「秩序の敏感期」でもあります。一度誤って覚えたルールや順序は、子どもにとってそれが「正しいもの」として強く定着してしまいます。文字の書き順も例外ではありません。
文字を教える際は、一画一画を丁寧に、そして常に同じ書き順で教えることが大切です。急いで大量に書かせる必要はありません。「綺麗に書く」ことよりも「正しいルールで書く」という習慣を優先しましょう。砂文字板を使う場合は、指で触ってなぞることで、視覚・触覚・運動が統合され、自然と書き順が身につきます。
3歳・4歳のお子さんの「書きたい」気持ちを大切に育むために
「書く敏感期」は、お子さんが文字の世界への扉を開ける、非常に重要なチャンスです。この時期の強烈な「書きたい」という衝動は、モンテッソーリ教育でいう「運動の敏感期」がもたらす自然な発達段階であり、親の焦りは一切不要です。
私たち親がすべきことは、高度な練習を課すことではなく、「正しい持ち方」と「正確な書き順」という秩序を乱さないよう、静かに環境を整え、サポートすることに尽きます。
まずは、100円ショップのアイテムやご家庭にあるもので「つまむ・運ぶ」遊びを取り入れ、指先の準備を整えることから始めてみませんか?となりのモンテッソーリとして、これからも皆さんが手軽に始められるアイデアを発信していきます。