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読む敏感期とは(4歳半~5歳半)

お子さんが急に街中の看板やスーパーのパッケージに書かれた文字に釘付けになり、「あ!」「ま!」など、知っている音を発するようになったら、それは「読む敏感期」が訪れたサインかもしれません。
モンテッソーリ教育において、4歳半〜5歳半頃に訪れるこの敏感期は、子どもたちが文字と音を結びつけ、「読む」という高度な知的な活動を始める大切な時期です。
この記事では、読む敏感期の具体的なサインと、家庭でできる、子どもを焦らせない穏やかな環境づくりのポイントをご紹介します。
モンテッソーリ教育における「読む敏感期」が始まるサイン
文字の読み書きは、「書く(運動)」が先行し、その後に「読む(知的)」が始まるとされています。書く敏感期(3歳半~4歳半)を経て、4歳半頃から子どもは、自分が獲得した文字の音の知識を使い、周囲にある文字を解読したいという衝動に駆られます。
例えば、お散歩中に電柱の「止まれ」の標識の「ま」の字を発見したり、お菓子売り場で「ポテト」という文字を発したりと、知っている字を見つけると、発したくて仕方がない時期です。
街中の看板、絵本のタイトル、スーパーの棚のプライスカードなど、どこでもかしこでも文字に反応し、それを「読もう」とする行動が、敏感期の強いサインと受け取ることができます。
「読む敏感期」を逃さない!親が意識すべき観察のポイント
親としてこの敏感期を前にすると、「早く文字を教えなければ」と焦ってしまいがちです。しかし、大切なのは子どもの強い興味・関心を示すタイミングを逃さないことであり、敏感期ではない時に無理に教え込むことは避けるべきです。
子どもの興味を尊重し、穏やかに見守ることで、文字への関心は長く持続します。タイミングを計るための具体的な観察ポイントを見ていきましょう。
興味を示さない時は「待ち」の姿勢を崩さない
周りの子が文字を読み始めたからといって、すべての子どもに同じ時期に敏感期が訪れるわけではありません。一つ文字を読んだからといって慌てずに、それが偶然なのか、強い関心からくるものなのかを観察しましょう。
興味が薄いのに無理強いをすると、文字に対するネガティブな感情を植え付けてしまいかねません。子どもが文字を求めていない時は、絵本の読み聞かせや会話を楽しむなど、知的好奇心を満たす他の活動に集中させましょう。
教えるのではなく「環境」で機会を提供する
読む敏感期にある子どもは、誰かに教えられるよりも、自ら発見し、理解することに喜びを感じます。親が無理に教え込むのではなく、子どもが「読みたい」と思った時に、文字がすぐ手の届くところにある環境を用意することが重要です。
この時期のサインは非常に明確です。もし子どもが何らかの文字を指さして「これは何?」と聞いてきたら、それは最高のチャンス。簡潔に、はっきりとその音を教えてあげましょう。
「読み」への興味を引き出す!家庭でできるモンテッソーリ流の環境づくり
特別な教具がなくても、家庭内の工夫で「読む敏感期」を最大限に活かす環境づくりは可能です。ポイントは「強制」ではなく「出会い」の場を作ることです。
1. 立ち止まる場所にあいうえお表を貼る
タイミングを計る最も簡単な方法のひとつが、あいうえお表やポスターを、リビングやトイレなどの日常的に立ち止まる場所に貼っておくことです。興味があれば自然と立ち止まって読み、興味がなければ素通りするので、親は子どもの立ち止まった時をサインと受け取ることができます。
カラフルで賑やかなものよりも、シンプルで文字が際立っているデザインを選ぶと、子どもの集中力を乱しません。
2. 生活の中にある文字を指さして話す
街中やスーパー、家庭内にある文字を、子どもに教え込むのではなく、親が「自分のために」読む姿を見せることも大切です。例えば、「この『牛乳』を買おうね」と、パッケージの文字を指さしながら話しかけるだけでも、子どもは文字が持つ意味や機能を自然に学びます。
3. ラベル作りや手紙交換で実用性を体験させる
読む行為が「生活に役立つ」ことを体験させると、子どもはさらに文字への関心を高めます。おもちゃ箱や引き出しに「ひらがな」でラベルを貼ったり、子ども宛てに簡単な手紙(例:「きょうのおやつは、りんごだよ」)を書いて食卓に置いておくのも効果的です。
文字がコミュニケーションや情報伝達のツールであることを知ると、「読みたい」という意欲はさらに強くなります。
4歳・5歳のお子さんの「読みたい」意欲を伸ばすために
「読む敏感期」は、子どもが自立した知的活動へと踏み出す大きな一歩です。この時期の「読みたい」という強い衝動は、親が無理に教えなくても、環境さえ整えば子ども自身が道を切り開いていきます。
焦らず、子どものサインを見逃さないように観察し、日常生活の中に文字との穏やかな出会いの場をたくさん作ってあげましょう。それが、子どもが文字を一生の友達にするための、最も確実なサポートになります。